2010年09月02日

コミュニティ時代の新たな食ビジネス VEG-TABLE(ベジテーブル)@横浜西口@

今日、飲食業は全般に低調である。それは市場社会全般の低調を映しているだろう。
かつて飲食業またはサービス業の繁栄は、QSC+Aといわれる「使用価値」とプライス=「交換価値」のバランスにあるとされた。今も原理的には変わりはしないが、バブル期以降の「新業態時代」にあってはとくに、そのような「市場原理的」なマーケティングビジネスとしての飲食業が追求されてきた、と思える。
強烈なアメリカ的サービスマインドの人的魅力で賞賛された個人商店「長谷川実業」が、いわばその成功によって自動的に市場原理の上昇拡大過程に引きこまれ、前市場的な人的資源をできる限り活かしながら事業性の軸足を「資産」と「成長」におく上場企業「グローバルダイニング」に、市場的には成長せざるを得なかったのはその辺の事情を物語っていようか。
しかし、飲食の「市場化」が飽和状態にいたり縮小さえしている現在においては、「マーケティングビジネス」としての飲食は次第に戦線を縮小せざるを得ない。

超長期的につづくかと思われる市場の停滞による集客の困難さと、孤立分断され、そのことによって初めて確立された「個人」間のコミュニケーションの回復が社会的主題になりつつある事情が相俟って、あらためて飲食業はその発生の原点とも言える、人的資源と小さなコミュニティに軸足を置く、コミュニティビジネス時代に入りつつある、ように思える。
(わたしには、今も80年代の「カフェ・ラ・ボエム」が市場社会のあわいから、別な価値を照射していた、と思える)

かつて取り上げた青山「COVI'S」、元住吉「FRESCO」や「厚木シロコロ・ホルモン」などのB1-グランプリの諸勢力、「横浜ベジタブルマーケット」を展開する「HANZOYA」や「ここから」、これから取り上げる「VEG-TABLE」などの存在は、巨大な世界的な市場社会ネットワークから身をそらすようにして、成立しようとするコミュニティ的な飲食ビジネスを志向しているように思える。
その他無数の、「地域」を形成する一つの有力な要因となっている、人的資源とコミュニティ形成に軸足をおいたビジネスは市場社会と混在しつつ融和はするが融合はしない新しいコミュニティ的な「経済」の原理として市場社会に代わるオルタナティヴであるかもしれない。
飲食事業、食にかかわる事業に携わる人たちは、そのことを良く自覚するべきだと思われる。

     ※     ※     ※

VEG-TABLEは、横浜に地盤を置く1956年創業の老舗飲食企業オリエンタル物産グループが経営する。
オリエンタル部物産グループは、時代の変転に堪えて、今日ではナイトクラブ、ラウンジ、カラオケ、和食寿司、中華、洋食、カジュアルイタリアン、カフェ、ラーメン、焼肉など多業態60店舗ほどを展開する複合飲食企業である。

いくつか、同じ店名を冠する他店化業態もあるが、多くは1店名に1店舗である。それもあまり大型のハコは少ない。手作り可能な範囲の店が多いように思われる。おそらくは創業時からの一店舗ずつの手作りの店作り=創造精神が生きている、このクニらしい飲食企業であるといえようか。

60ほどの店名が並ぶ、オリエンタル物産グループの案内を見ながら、多くの感慨を禁じえなかった。

市場化時代にはチェーン化が成長=生き残りのための最有力戦略とされ、現にそのように転進した企業もあるが、わたしの知るところでは、多くの創業者たちは、何事かチェーン化精神=商業界精神に異和を感じてもいたであろうか、手作りの店作りにこだわり「時代遅れ」となることを厭わなかった。
そのため多くの創生期飲食企業は苦戦し、消えていった企業も、もちろんのことながら多いのである。

そもそも、このクニの飲食業は、概ね朝鮮戦争で市場経済が成長軌道に乗り、息を吹き返した1951〜5年頃(昭和26年〜30年)ごろに創生する。
東京における瀬里奈グループ、大阪における大和実業(1951年創業・現ダイワエクシード)、丸和観光、名古屋における木曽路グループ、金沢における寿観光、福岡のロイヤルグループ(1951年)など、各地にたくさんの新しいパイオニア事業家が誕生した(その他の多くは、いまは多くは忘れてしまったが)。

多くはキャバレーなどの社交飲食業を手がけて基盤を築き、完全に成長軌道に乗った1960年頃、洋酒・ウィスキー普及のための実にきめ細かく手厚いフィールドマーケティングを敢行した現サントリー社の成長軌道に合わせるように「成長」を夢見て、バーやコンパ、洋酒喫茶などのアルコール業態を展開していったであろう。
その頃の飲食業は一部男性のものであり、女性は外食も外で飲酒することも倫理に反することであったろうか。1970年代、ファミレスやFFS(ファストフードシステム)が登場してもなおそうであり、バブル期をへて食の質やファッション性(すなわち、消費そのもの)が市場の重要ターゲット(生きることの価値)となるまで、飲食業はいわば社会の本筋=生産から隔離された消費産業であり「日陰」の仕事であったのだ。
その後の時代の、転変を経て、外食や飲食は巨大市場を形成したが、飲食業創生時代から生き残っている企業は、おそらくとても少ない、のだ。

それは、良く言われるように、時代の消費は何事か時代の精神を象徴するとすれば、一つの成功はそのまま次の時代への適合の困難でを意味するからだ。
消費は貨幣の自己増殖原理のように(当然だが)増殖するが、市場原理の浸透度合いに応じて、対象をもの的必需消費からこと的選択嗜好消費へ移し、付随する意匠(たとえば「デザイン」というもの)を代えながら、一つずつの時代を画してゆく。
たとえば、アルコール業態で育った事業家は、非アルコール事業への適応に困難、または嫌気を感じ、高付加価値手作り志向業態でそだったものは低価格システム化チェーン化業態への適応にやはり困難または嫌気を感じる。
(わたしも、バブル期のビール全盛期のデザイン化初期時代の息吹を全身に浴び、その後の食べ放題などの価格志向の店作りを「大雑把な」店作りだと感じたりしていた。また多くの師恩を受けた丸和観光のあまりに率直であるがゆえのあまりにあっけない消滅などの転変を見て、市場社会の原理(というか消費主導の消費資本主義からついにはお金が一番効率的にお金を生むという金融資本主義へといたる奇怪な共同幻想貨幣の自己増殖に)嫌気を感じても、いた…)

60ほどの店名が並ぶ、オリエンタル物産グループの案内を見ながら、多くの感慨を禁じえなかった、のである。

     ※     ※     ※

■VEG-TABLE ベジテーブル
横浜市西区北幸1-1-2 横浜共益ビル8F 横浜駅より徒歩1分
tel 045-322-2221 


posted by foody at 09:42| 神奈川 ☀| Comment(0) | おいしい店(川崎/横浜/そのほか) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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